株式会社東京合唱協会

コラム

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コラム

No.16『音の居場所を探して』

2025
9/1

連日の酷い暑さでなかなか秋を実感出来ない9月が始まりました。まだまだ冷たいドリンクが手放せない毎日ですが店先には早々とハローウィングッズや栗やぶどうなどの秋の味覚が並び始めました。この「見た目は秋、体感は夏」というギャップに季節を間違えたような不思議な気分になります。でもこの大変な暑さに振り回されながらも、新しい月というのは新しい何かを運んでくれる気がしますよね。
そんな私も先日新しい経験で様々なギャップを経験しました。ライブハウスでオペラアリアを歌わせてもらったのです。しかも、カラオケ音源でマイクを使用しての演奏でした。

ライブハウスといえば、ロック、ジャズ、ポップスなどの現代的な音楽が鳴り響く場所。照明は暗くステージとの距離も近く、観客との一体感が魅力の空間です。だけどそんな小部屋のような空間で果たして「オペラ」が聴衆の心に響くだろうかと不安がいっぱいでした。なぜならオペラが育まれてきたコンサートホールと音響環境が違い過ぎるからです。
コンサートホールは、自然な声の響きを活かすように設計されています。声が天井や壁に反射し、広がりと深みを持って聴こえるようにできています。なので、コンサートホールで歌うとき、私たちオペラ歌手は音を空間に放つように歌います。マイクを使わず声を遠くまで飛ばして壁や天井に反射して響くように歌うのです。
一方、ライブハウスはマイクありきの設計がほとんどです。音がダイレクトに届き、残響は少なめ。オペラ歌手がそのまま生声で歌っても、響きが吸収されてしまい、本来の声の魅力が伝わりにくいこともあるのです。音源が近いのにオペラにとってはマイナスになる、そのギャップためにマイクを使用しての歌唱スタイルや表現が求められました。

しかしどうでしょう、そんな不安もよそに結果としてなかなか面白い体験になりました。普段なら客席の一番後ろにまで届くように張っていた声が、マイクによってすぐそばにいるような近さで耳に届くのです。声を張る必要がなくなる代わりに、「小さな声のニュアンス」や「ささやき」のような表現もできるようになり、マイクを使うことで歌を伝える手段に広がりが生まれたのです。

当団も今までに様々な会場で演奏してきました。特に学校公演の場合は多くの会場が体育館になります。コンサートホールとは違い体育館によって響き方が様々です。だからこそ私たちはどこまで届いているのか?観客の耳にどう聞こえているのか?毎回並び方を変えてみたりピアノの位置を変えてみたり、その場所に1番最高の演奏が届けられる様に工夫しています。

芸術の秋ということで、これからいろんな場所でいろんなコンサートが催されるはずです。
皆様もお気に入りのコンサートホールなどはあったりしますか?ご観覧の際には是非演者達がどういった工夫をしているのかも楽しんで観てほしいと思います。


Written by I.E

No.15『夏の大冒険』

2025
8/1

8月になりました。
毎日暑い日々が続いていますが、みなさまお変わりないでしょうか?
8月になるとあ〜この季節がやってきた!と思うことがあります。
それは毎年、松本で開催されているセイジ・オザワ松本フェスティバル(通称OMF(旧サイトウキネンフェスティバル)です。
世界中から優れた音楽家たちが長野県松本に結集し、サイトウキネン ・オーケストラを中心にオペラやコンサートが行われる夏の音楽の祭典!
思い起こせば、最初に参加したのはオペラプーランクの「カルメル会の修道女の対話」でした。
まだ大学院を出たばかりの私は、初めての松本で世界の一流の演奏家と一緒に合唱団として参加していました。東京合唱協会の団員も数多くこのOMFには参加しており、ともに夏の松本を過ごしています。その当時、合唱団の中では1番下っ端で諸先輩方とひとつのオペラに時間を注ぎ、最高峰のキャスト、オーケストラと作り上げる一カ月以上の松本での滞在期間。いろんなことが新鮮でたくさんの刺激を受け、オペラという総合芸術にたっぷり時間を費やせる稽古の濃厚な毎日は、ワクワクドキドキ夏の大冒険のようでした!

今年で34年目を迎えるセイジ・オザワ松本フェスティバル。
今年も出演させていただきます!
今年はオーケストラ コンサート Bプログラム─小澤征爾生誕90年を祝う─で、マーラー:交響曲 第2番 ハ短調「復活」に合唱団として出演します!
もう下っ端ではありません笑
合唱団の中ではベテランの域?頑張ります!

松本の美しく雄大な自然、透き通る風、澄んだ空気、清らかな水…そして美しい音楽を奏でられる時間、恵まれた環境の中で、音楽を紡いでいられる時を楽しみたいと思います。
今夏も夏の大冒険ようなワクワクドキドキした時間を過ごせるよう務めてまいります。

みなさんも体調に気をつけて、暑い夏を元気に過ごせますように。


Written by S.M

No.14 『ジャンルを超えた曲、そして暗記と暗譜』

2025
7/16

今年もコンクールシーズンがやってきました。
そう夏といえば、NHK全国学校音楽コンクール、通称【Nコン】です!
毎年様々な名曲が生まれ、特に中学校の部の曲はその年の話題のアーティストの方によって作曲される事で有名です。(過去にはゆず、アンジェラ・アキ、いきものがかりやAKB48まで)
今年は、男性ダンスヴォーカルユニットBE:FIRSTの“空”という作品になりました。
彼らのパフォーマンスは歌、ダンス、そして激しいラップが折り重なる独特のスタイル...そう、今回のこのNコン課題曲には曲の中にいよいよラップが登場するのです!

ラップの世界の言葉で今回の楽曲“空”を簡単に紹介するならば...
①リリック(歌詞)が膨大にあり、言葉遊びとも言える沢山の②ライム(韻)をふみながら、2拍目と4拍目に強拍がくる独特な③フロウ(歌い方・リズム)に翻弄される(笑)、でもとってもノリやすく新鮮で楽しい曲になっています。
さぁ、このジャンルを超えた楽曲を各校がどのように調理してくるのか…。

私はいつも「暗譜と暗記は違う」と子ども達には伝えています。
音符と歌詞を覚えるなら、それは誰にでも出来る暗記。
暗譜は、譜面上に書いてある楽語・強弱記号など作曲家のメッセージまで把握する事。
そして、そこに君たち一人一人の色を付けていく事。

私も存分に合唱とラップの融合を楽しみながら、暑い熱い夏を謳歌したいと思います!


Written by S.I

No.13『《推し》はいますか?』

2025
7/1

観るだけで、聴くだけで気分が上がる存在!それが《推し》

思い返すと物心ついた時にはピアノを習っていて、家ではFMからクラシック音楽が流れているような生活をしている子供でした。
歌謡曲は週に一度、土曜日のお昼に流れるラジオ(KOSE歌謡ベストテン!歳バレますな^m^)くらいしか聴いておらず(テレビのベストテンやトップテンなどは殆ど観られないくらい早寝早起きの子供だった(笑))流行に疎い方でした。

そんな私が中学生の時、とあるグループに出会うことに…クラスの男子が教室で、当時とても流行った『ウォークマン』で彼らの曲を聴いていました。主に夏の歌を届ける『季節労働者』などとも揶揄されるほど夏が似合うバンドでした。一瞬で虜になり、すぐにダビングをしてもらい、カセットテープが伸びきってしまうまで繰り返し繰り返し何度も聴きました。

他の人と何が違うのか…その頃は考えもせずただただ聴いていたのですが、自分が歌を習い始めた高校生の頃、『声』に惹かれていたことに気づきました。粘りがあり少し鼻にかかる、それでいて喉の奥までスッコーンと抜ける思い切りの良い発声。低音の甘い声から高音の爽やかな声。何を聴いてもワクワクとドキドキが止まりませんでした。

音大浪人した時は、レッスンの行き帰りに、自分の歌を録音した声と向き合うのが嫌すぎて、彼らの音楽を聴いて癒されていました。実際、彼の声を聴いた後は喉が開くので良い効果もあったのですが…(笑)

大学、大学院と卒業して歌う仕事に携わるようになった頃、私のバンド熱はいつの間にか冷めていました。大人になったのか、単に時間が無かったからなのか…。アルバムが出る度ポツポツとは聴いてはいたのですが、ライブに行くほどの熱は無くなっていました。

気づけば数十年が経ち、数年前、コロナの自粛生活期間中、配信で無観客のコンサートを観ました。純粋に彼らの音楽が好きなんだな〜という思いがぶり返してきて、公にコンサートが開催出来るようになってから高校の同級生と共に出かけていきました。

そしてなんと!先日とうとうハワイまでおっかけをして40周年をお祝いしてきました。「これだけ長い間第一線で活躍してくれてありがとう〜♪」という気持ちと「これからも私の希望でいてください!!」という気持ちでいっぱいになりました。

音楽のフィールドは違えど、息の長い活動するためには色々ご苦労もあったのでは、と想像がつきます。
彼らが活躍する限りずっと応援していきたいですし、そのために健康に留意しつつ、何処までもおっかけていけるように足腰しっかりと鍛えておきたいです!

また自分自身も歌い続けていけるよう、切磋琢磨していきたいと改めて思いました。

♪笑顔が似合う 楽しくなる わけもなく胸 ドキドキ 体中が感じてる 空と海のハーモニー♪


Written by O.K

No.12『どうしても歌いたかった曲』

2025
6/17

中学生の頃、私は合唱部の活動に没頭して学校生活を送っていました。
副部長になって迎えた3年生の春。新年度の活動が始まり、NHK全国学校音楽コンクールで歌う自由曲を決めるべく、3年生の部員が集まって、過去のブロックコンクール・全国コンクールの録画を見たり、合唱曲を集めたCDを聞いたりしながら「これもいいね、あの曲もいいかも?」と候補曲をあげていきました。
その中の1曲、『名づけられた葉』(新川一恵作詞/加賀清孝作曲)。前奏とそれに続く「ポプラの木には ポプラの葉」という歌い出しが力強く印象的、表情豊かな緩急、スケールの大きな構成…私たちは感動し、この曲を歌いたい!と意見が一致。顧問の先生に話し、楽譜を探してもらうことに。
しかし後日、この曲は混声合唱のみで女声バージョンは無いからコンクールでは歌えない、ということが判明し、他の曲を全く想定していなかった私たちは意気消沈…
混声合唱団だったら『名づけられた葉』は歌える、だけど今さら勧誘したところで男子が入部してくれるわけもないし、コンクールにも間に合わない…と、仕方なく他の曲を探し直そうとしていた矢先、顧問の先生から驚きの報告がありました。
サッカー部の3年生がすべての大会を終え引退した後、合唱部に助っ人として参加してくれることに!
先生がどんな状況でどう話をつけてくれたのかは未だに謎なのですが、とにかく『名づけられた葉』を歌える状況になったのです。
「クラス合唱しかやったことのない男子たちなのだから、これから練習してもコンクールでどれだけ歌えるかわからないよ」と先生には釘を刺されましたが、それでもいい、どうしても『名づけられた葉』が歌いたかった私たちは歓喜しました。

大会を終えサッカー部を引退した男子たちが練習に参加し始めました。楽譜が読めない、発声方法もわからない、音程が取れない…それでも必死に練習に取り組んでくれました。
コンクールで他校と肩を並べられるレベルにはとても到達できませんでしたが、憧れの曲を演奏できることに喜びを感じ、サッカーボールを楽譜に持ちかえてくれた彼らに心から感謝し、そして3年間で一番楽しい日々でした。

あれから数十年がたち、様々な合唱曲を歌うようになった今、『名づけられた葉』のように、どうしても、ヘタでもいいから歌いたい!と思える曲に出会っているのか…いや、もしかしたらそんな風に思える感性を失いかけているのかもしれません。
かつての自分のように、どんな曲にも感動をもって向き合える演奏家でありたいと、このコラムを書きながら改めて思い直したのでした。


Written by N.Y

No.11『あの歌の響く丘へ』

2025
6/1

東京合唱協会の大切なレパートリーのひとつに、『サウンド・オブ・ミュージック』があります。
私がこの作品に出会ったのは高校時代。音楽の授業で映画を鑑賞し、その瞬間から心を奪われました。
以来、ずっと変わらぬ憧れの存在として、私の中にあり続けています。

その中でも特に印象的なのは、やはりオープニングのシーン。
マリアが、オーストリアの湖水地方《ザルツカンマーグート》の緑豊かな草原を背景に、「The hills are alive〜♪」と歌い出す場面です。
あの美しい風景は、まさに私の“憧れの原風景”となりました。

そして先月、長年思い描いてきたその場所を、ついに訪れることができたのです。
個人的な仕事のご縁で、念願のザルツカンマーグートへ。まさに“聖地巡礼”の旅でした。
それでも、実際にその場所に立ち、風を感じ、空を仰ぐと、スクリーン越しでは感じられなかった圧倒的な迫力と美しさに、思わず声を上げてしまいました。


一面に広がる深い緑、静かにきらめく湖、どこまでも続く広い空。
澄んだ空気に響く鳥たちのさえずり。風に乗って、遠くから届く教会の鐘の音…。
そのすべてが音楽のように美しく、思わずマリアのように両手を広げて、この壮大な音楽を全身で受け止めたくなったほどです。

想像を超える情景の中で、今この瞬間、自分がここに生きているということもまた、何よりの奇跡なのだと感じました。

この旅を通して、『サウンド・オブ・ミュージック』への思いがあらためて深まりました。
作品の持つ力、美しさ、そして命の尊さを、今まで以上に強く感じたからこそ、これからも心を込めて丁寧に歌い続けたい。
そんな気持ちが、自然と湧き上がってきたのです。

この歌を通して、一人でも多くの方に、あの感動や喜びが届けられたら…。
それが、私のささやかな願いです。


Written by N.K

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No.10『プレゼント交換』

No.9『春らんまん』

No.8『家族が増える=音楽が変わる!?』

No.7『歌う』

No.6『合唱との出会い』

No.5『タイムスリップ』

No.4『望みは高く』

No.3『睦月に思う…』

No.2『みんなちがって、みんないい!?』

No.1『今、聴きたい歌。そして転調の魅力』

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